昨日見た夢

ジュリア姉ちゃんのこと

となり町からまたジュリア姉ちゃんが家に来た。
僕のお兄ちゃんに用があるからだ。
お兄ちゃんは、難しい本に書いてある字が読めるからだ。
ジュリア姉ちゃんは読めないのかな。
お兄ちゃんは本の字を指で辿りながら、ジュリア姉ちゃんに「トウモロコシのヒゲは根である、なぜなら、トウモロコシに土をかけ、水を与えておくと、トウモロコシの芽と根が出てくるが、その根と色が白いときのヒゲはよく似ているからである。このヒゲはトウモロコシが熟してくるとともに茶色くなっていく・・」などとジュリアお姉ちゃんに説明している。
ジュリアお姉ちゃんはふむふむと頷いている。
時々、ジュリア姉ちゃんを見ている僕と目が合うと、にっこりとして、また本に目を落とす。

僕はジュリア姉ちゃんをとなり町まで送ることにした。
お兄ちゃんが、いつもは送るんだけど、今日はお父さんに呼ばれてて、これから忙しいみたい。
坂道を下りながら、「お姉ちゃんは、お兄ちゃんと結婚するつもりなの?」と聞いてみた。
「うーん、お母さんはそうなればいいって言うんだけどね。」
「たよりないんだろ。」
「うふふ、そんなこと無いって。」
「さっきの本に書いてあったこと、違うよね。」
「んん、どうして。」
「この前、トウモロコシでやってみたんだ、同じこと、そしたら芽と根は確かに出てくるけど、一つ一つの粒から出てきてて、ヒゲとは違うし、白いフワフワしたのが皮と実の間に出来てたけど、あれは肥料を作るときにできる白いやつに似ていたから。」
「へえ、君すごいね。」
「お兄ちゃんは本に書いてあることは本当だと思ってるんだ、だけど僕はそうは思わない、あれらは本に書いた人が本当だと思ったことを書いただけなんだ。」
「・・そうなのかな」
「そうだと思う、僕も本読めるけど、だいたいそんな感じ、やってみると本に書いてあるようにならなかったり、なっても途中が違ったりする。本によっても違うこと書いてあったりする。」
僕はいつも思ってることを得意になってジュリア姉ちゃんに話した。
「ていうかさ、君、本読めるんだ。」
「だいたい読めるよ、ラテンもギリシャヘブライも。」
「へえ、君すごいね、ヘブライとかは無理かな。」

あれ。読めるんだ。さっきの本・・。

「字読めるのに家に来るんだね、何で?あの本珍しいのかな。それとも、やっぱりお兄ちゃんに会いに来てる?」
お姉ちゃんは口を尖らせて、僕をちらちら見ている、けど答えない。
もしかして。
「まさか、僕のこと好きなの?だったらあと少なくとも五年待ってよ。」
本気の冗談。
なぜならあと五年経ったら僕も結婚できる年になるから。
お姉ちゃんは怒ったのか、となり町に着くまで何も喋らなかった。
気まずくなんて無かった。僕はすっきりしていた。
結局五年後、ジュリアお姉ちゃんは僕と結婚した。僕のお母さんはこの結婚に大反対だったし、お姉ちゃんも五年は長かった、といつも文句を言うけれども。
ジュリア姉ちゃんは引く手あまただったらしいけど、僕のことが好きだから、僕のために待っていてくれたんだと思う。
僕はそう思ってる。本当のことだから書いておく。
今でも僕はジュリア姉ちゃんって呼ぶんだけどね。

ジュリア姉ちゃん口尖らせすぎ。