ウナギさんウナギ氏はそこに居ません

さて。朝まで寝てる間に、うなぎを捌く夢を見ていた。これはうなぎ捌きの経験値に含まれるのだろうか。確か昨日俺うなぎ釣って冷蔵庫に入れたよね、今頃ほどよく冷えて、おとなしくなって、ゆるりと捌かれてくれるだろうか、不安であります。なんでわざわざ生きたまま捌くのだろうか、確かに胴切りのうなぎって、イギリス庶民の愛するゼリー寄せみたいで悪い冗談みたいなんだけれど、頭を落とし腹を開いて内蔵を抜いて、横に切ってから開いていったほうが楽そうなんだけど、そうでもないのだろうか。結構可愛い顔してるから、大きいほうだけ食べて、小さい方は馴染みの池にでも放そうか。などと思いつつ、会社に着き冷蔵庫を開けてみるとなんだか元気がない。おーいうな蔵、うな志〜。冬眠かい、もう夏ですよ。

すごく遠くを見ているような、うな志の眼差し。時間が止まっているような。炭酸飲料を破裂させる、手加減知らずの冷蔵庫が凍死させてしまったのだろうか。すごく泡立った水面を見るに、自らの粘膜で窒息してしまったのだろうか。仮死でよかったんすけど。電気ショックで蘇生するかな。
気を取り直して、調理に進むことにする。死後硬直だか凍ってんだか、曲がったまま固く冷えたうな蔵をまな板変わりのスノコ一枚板にのせ、目打ちが見当たらないので、三目ギリを頭部に打ち込み、体を伸ばす。動かないのでサイズとか計り放題だね、L392mm、胴体は縦に長い楕円形で、太いところで15〜25mm位、思ったより長い。でもこのサイズ、ウナギではなくメソというらしい。包丁があんまり切れそうもないので、頼みのカッターを取り出すが、カッターの刃も錆び付いている。替え刃も無いと…。モノづくりの現場にあるまじき状況だね。まあ作っちゃいねえけど。しょうがないので包丁をノコギリのように使い、エラの後ろにねじ込んでいく、そして一番の切れ味をほこる100均裁ちハサミでジョキジョキ背から皮を切り裂いていく。包丁で切れ目をなぞり、少しずつ深く骨に沿って身を割っていく。なかなか内臓まで、腹までいかない。これで本来ならもっと元気に動き回るんだから、いよいようなぎ捌きってのは曲芸みたいなものだね、しらんけど。なんとか内臓に刃が達して、どうにか内蔵を取り出す、ぶちっとちぎるように。そして背骨をはずそうとまた包丁やらハサミやらで、足掻いていく。なんか解剖っていうか、手際悪いなー。どうにか背骨を外し、ほお肉がうまいという意見もあったので、頭を付けたままハサミでわった後、ボールに内臓ごと投げ込み塩水に付けておく。このへんは気分的なもので、なんか塩で清められるような感じしないですか。こうしてみると皮ですねうなぎって。ではうな志に取り掛かろう、うな志君の方が死後硬直が激しくて、なかなか板の上に乗らなくて苦労する。L492mmの径25〜34mm。ちょっとうな蔵よりずんぐりした印象。こいつもなかなか切れなくて、刃が悪いのか、死んでるから硬いのか、そして腕が悪いのか、ササクレだらけになりながら、どうにか開き、内臓を引っこ抜く。こいつは背骨に肉を多く付けてしまった、ちょっともったいない。ざっと洗った後、4分割しフライパンで焼いていく。少々臭くても、よく焼けば問題ないとのこと。緑色だった皮が青くなり、焼き色がつくまでしつこく焼いていく。焼いている間に、内臓を検分する。うな蔵の腸らしきものの先を切り、しごく。ミミズ色のどろっとした液体が出てきたくらいで、あんまり食べてないご様子。綺麗なもんだ。うな志の腸も先をきりしごいてみるとなにかそうめんのようなモノが。そうめん...ではなく寄生虫なんでしょうね。「ウナギ 寄生虫」で調べてみるとそれは「黒い」「線虫」って書いてあったが、無色透明ですねこれは。腸だと思ったけど、浮き袋だったのかしら。内臓はよくわからないので、捨ててしまいます。両面こんがりしてきたのでうな蔵を焼いていく。一緒に背骨も。少し小さいので3分割。これもしつこく焼いていく。焼き上がり。すごく小さくなってしまった。幅もだが、長さが3分の2位かなー。白焼きで買うウナギって元が大きいか、あんまり焼いてないかなのかな。この後、うな蔵の頭付きの3分の1を、細く切ってシシトウと炒めて、スパゲッティーの具にしたのだが、フランス料理かなんかでウナギってムニエルっぽくなってなかった?魔女宅でうなぎパイって出てなかった?とにかく香ばしく焼いて塩味つければうまいんじゃないかと思ったんだが、いまいち合わない。ウナギが磯っぽくてギザミっぽい。うーん残り食べられるかなー。つづく。